自分でやります、はい。

売ってなければ作ってみる。うまくいかなきゃもう一度。興味があればやってみる。そんな人間の記録ブログ。

入院2日目(カテーテルアブレーション当日)

注意)あくまでも私個人の感覚・感想です。医学的に間違った記述があるかもしれません。

 

1日目のクズ加減はこちら。

doitmyself.hatenablog.com

 

早朝測定~血圧ファラウェイ~

6:30になると部屋の電気がつく。

が、心電図の電極が外れただの点滴が終わっただのトイレに行きたいだので看護師さんが頻繁に出入りしていたので、いつが夜で夜中で朝だったのかよく分からない。看護師の仕事は過酷だな。

 

朝食はなし、7:00までに服薬をとのことだったのでリクシアナ以外の薬を飲んだ。

それから5分も経たずに看護師のHさんがすっ飛んで来た。

「某山さん、リクシアナ飲みました?」

昨晩O先生からリクシアナなしでと聞いていたので飲んでいないことを告げると、ホッと表情が緩むのがわかった。

「よかったー!昨日の看護師が変更を伝え忘れたみたいで、ごめんなさいね」

結果オーライっすわ!

 

・体温36.9

さがっている

・血圧90/70

妙に低い

 

「昨日は……120はありましたね」

Hさん、点滴をしていない腕で2回、点滴の針を入れた腕で2回、血圧を測りなおす。102/73となり、記録に至る。

 

 

術前準備~手術スタイル~

むくみ防止のための弾性ストッキングと術衣(浴衣)に着替える。弾性ストッキングは、市販のものでいえば「メディキュット」みたいなものか。念のため言っておく。

 

あれを履いた誰もが菜々緒のような脚になれるわけではない。

 

「弾性ストッキングはものすごく履き辛くてみなさん苦労するので、難しければお手伝いします」

拍子抜けするほど簡単に履けて笑う。110デニールタイツを履く感じに似ていた。

与えられたレンタル浴衣はLLサイズで、胸元のあわせがガバガバしてしまう。心電計のコードが引っかからないように注意しながら、手帳につけていたダブルクリップで留めることにした。

 

 

手術から術後まで世話になるT字帯(ふんどし)。袋に書いてある図解を見ると、ふんどしというよりも布おむつの印象。あとで局部を拭いておこう。導尿もあるはずだ。

7:00から飲水禁止なので、5分前に最後のジャスミン茶を堪能。

 

 

手術カウントダウン~抜かりない~

 

手術まで1時間、点滴が開始された。抗生剤が入ってるって言っていた(ような言ってなかったような)

術中はもちろん、術後も絶対安静だし歩けるようになるまでは自力でトイレに行けない。というわけで導尿のチューブを挿入。なぜかスゥッと入らなくてチクチクと痛い。入ったら入ったでなぜか下腹部が鈍く痛い。便意じゃないことを祈るしかない。

そしてT字帯を装着。導尿が始まっているので移動はできないが、体を起こすのはOKとのこと

昨晩液晶を付けたままにしてしまったiPad miniの充電を開始してひと息つく。モバイル端末は、術後動けない間のお友だちだから栄養たっぷり注いでおきたい。

 

20分前になった。

定刻にすぐ出発できるように、点滴の位置やベッドの高さ、背もたれの角度を調整。

アブレーションはオペ室ではなくカテーテル検査室で行う。2〜3時間ほどのオベだから1日数件をこなすのだろうし、私の後に検査やらオペやらが立て込んでいるだろう。時間通りに進めるために一秒たりとも無駄にはできない。

クラウチングスタート状態。

軟骨ピアスを2つ、外し忘れていた。なぜか1つはキャッチが行方不明、もう1つはピアスごと行方不明。手術に恐れをなして逃げ出したかピアス野郎!

前髪のピンも胸元のクリップも外し、準備完了。

 

 

カテーテル室にて準備~聞いてないよぉ~

定刻通り出発し、カテ室に入る。

出会うスタッフが次から次へと職名と名前を名乗ってくれるが、「宜しくお願いします」と返すのが精一杯。一体何人のスタッフが携わるんだろうか。たかが23時間の手術とはいえ、沢山のスタッフさんの力があってこそ短時間で終わるのだろう。

ID確認を済ませると、病室のベッドから手術用のベッドへ自力で移動する。

手術用のベッドは幅が狭い。体が横に大きい方は辛いだろうな。細身の私でも「気をつけ」の姿勢しかできない。カテーテルの操作をするのにはこの方が都合がいいのかもしれない。

時刻は9:15。カテ室で私が最後に見た時計の針。

ここからまさかの展開が待っていようとは……

 

胸と背中に沢山のパッドを貼り付けていく。術中は色々な角度から心臓の形を確認して3Dマッピングをするため、パッドの数も多いのだろうな。

部屋はとても寒く感じた。機械の熱がこもらないように冷やしているんだな。

顔の真横にあるデカい液晶画面には心臓3D画像が映し出されている。カテ室内には同じような液晶がいくつもあった。別の画面にも同じ画像が映し出されているのだろう、心臓3D画像はくるくると周り、それを見ながら話をする声が聴こえる。

 

後から入ってきた先生が、何かしらのトラブルに見舞われていたらしい。詳細は分からない。

「先生大丈夫なんですか」「そのままオペですよ?」「だって頭でしょ?」

待って……待ってよ、私が心配、私が不安!なになに、どの先生が何なの?

教えてパトラッシュ!!!!!

 

「顔のすぐそばまで、黒い機械が降りてきますが心配しないでくださいね」

術中、レントゲン透視下でカテーテルを動かしていく。そのための装置だと思う。黒いフィルムの四角い箱。

「食道に温度計を入れますね、鼻から

……え?何だって?鼻から、だと……ちょっとそれ聞いてないよ!容赦ない手技でスルスルと入れられるコード。太さの体感としてはiPhoneのライトニングケーブル、の「付け根」

「喉まで(この段階で既に喉なんて通り過ぎている)きた感覚があったら唾を飲み込んでくださいね」

いやいやあんた上手すぎて無意識のうちに飲み込んでますよ、あああああ。

オエッともならずに飲み込む優秀な患者だと自慢したい。

体を動かすと喉と鼻にものすごい違和感があって気持ちが悪いのだが、動かなければ済むことだ。

一番嫌だったのが「唾液を飲み込む」こと。人間ですもの唾液ぐらい分泌しますよ!

飲み込もうとするでしょ?飲み込むゼロコンマ3秒手前ぐらいで、既に食道もしくは喉が動くんですよ。

スイングする寸前に「一球待て!」って指示されるようなムカつき。

「気持ち悪いよね、ごめんね」

心臓と食道はとても近い位置にある。アブレーションで焼灼する位置によっては、食道にまで熱が伝わり合併症を起こす危険性がある。なので食道の温度をモニタリングしながらアブレーションを行い、温度が上がりすぎたら焼灼を中止する。

私のためを思って入れてくれてるんだよ!我慢しろ!

 

 

カテーテル挿入~あれ、あれ~

「じゃあ某山さん、始めますねー」

「おなしゃす」

「まず鎖骨んとこからやるねー」

O先生はゆるい。ゆるい関西弁を駆使するゆるい先生。オペ開始もゆるい。

先生から鎮静剤(だと思う)の点滴指示が飛ぶと同時に、肩に消毒液がドバドバかかる。

「点滴で、眠くなる薬を入れていくのでね。だんだん眠くなって眠ってる間に終わるからね」

水色の滅菌シートが顔~肩全体を覆う。鎖骨部分には穴が開けられていてそこから処置をする。

麻酔していきますよーの声とともに鎖骨下にチクチクとした感覚がある。こういう痛みには滅法強い。どうってことはない。チクチクは徐々に弱まっていく。そのうち眠たくなって、気がついたらお昼ご飯の準備ができてるんだぜ、楽勝っすわ。

「某山さん、ぼわーっとしてきた?」

「えっ、や、全然(そんなに早く眠くなるの?!)

「そっか」

眠くなる薬、増量の指示。鎖骨の下の刺痛は消えたが、何かが触れて動いている感じはある。カテーテル(やカテを通すための筒)を入れてるらしい。

「あれ、進まないな」

「もっと上の方じゃ」

「こっち?」

鎖骨をえぐる圧力。段々と強くなっていく。

「某山さん痛い?」

「いや、我慢できるていd痛いです💢💢

マジで痛い。カテーテルで鎖骨を掘られたみたいな痛み(体験したことはない)

「そっか、そしたら先に鼠径、やろっか」

おいおいおーい!突っ込んだままかーい!

いいんだ、いいの。O先生のそのゆるさを信用してる。私が眠ってからゆっくりと作業してください。

 

「某山さん」

「はあ」

「あ、まだ眠くないのね」

薬の種類変更。◯◯(数値)から始めちゃって、と言っていたので量も多めなのだろう。

眠れぬ森のクズのために先生苦戦。

右鼠径部も同様に消毒と麻酔。すぐに刺痛が消え、カテーテル挿入開始。

「ん?予想よりも、予想よりもずっと、下だなぁ。ん?もっと下?」

 

先生、お口チャック💢💢💢

 

痛みがあるわけではないので、静かに見守る(ただし見えるのは水色のシート)

もう1人の執刀医とこうでもない、あーでもない、と悪戦苦闘している様子。血管の走行が、カテーテルがスムーズに入らない曲がり方だったのかもしれない。

「おっ、もうちょい、よしゃ入った!」

その言葉と同時に、左胸に妙な不快感が落ちる。

うわぁ、心臓の中も触覚があるのか……

 

先ほどうまくいかなかった鎖骨下に戻る。うまく入らなければ首から入れる、と術前に聞いていたが、せっかく途中まで入ったのならぜひ頑張って欲しい。

時間の経過がわからない。少なくとも入室してから1時間以上経っているだろう。カテーテル挿入開始からもそれぐらい経過してそうな体感。鎖骨下二度目の作業中に少しウトウトしたのだが、すぐに意識が鮮明になる。

「どう?寝た?」

スタッフがシートを覗き込んだので「寝てません」と返事をする。

「眠くならない?」

「さっきウトウトってなったんですけど、今は目が冴えてます」

薬増量。喋るたびに鼻のチューブが動いてとても気持ちが悪い。何かサインを決めておきたいとおもうほど。

やっとのことで鎖骨下のカテーテルも心臓の中に「ぞわ」と着地。

 

 

心臓の中を確認~ざっくり~

そういえば、心房細動を治すための肺静脈隔離は、心房細動を誘発しないで焼いて行くのか?ふと思う。

心房細動があることは明らかで、心房細動の起源が肺静脈にあることも明らかなので、そうなのかもしれない。

カテーテルには、電気の流れを掴むための電極とか、焼灼用のカテーテルとか、いくつか種類がある。心臓の中から心電図を取る感じで、確認作業が進んで行く。詳しくはわからないが、スタッフ間の連携が取れてるな〜すごいな〜という印象。

 

 

アブレーション~焼いて行こう~

 

「じゃあ焼いて行こうか」

 

それでは、焼いていきますね。

 

お料理番組みたいな感じでアブレーションスタートとなる。

今までは自分から見て右側、点滴パックの方から薬剤を入れているようだったが、今回は左側にスタッフがきた。

「痛み止めのお薬を入れていきますよ」

強い薬に触れている時間はできるだけ少なくするのが基本なのだろう。この痛み止めは、アブレーション時の痛み対策。アブレーションの直前に入れていく。

 

高周波電流の強さと時間を先生が指示。X線を使う関係なのだろうか、どこか離れたところからマイクを通したようなスタッフの声。電流係と確認係の二人。電流係が「いきます」と電気を流す。

心臓の中にお湯を流し込んだような、じんわりとした熱さを感じる。熱さ?熱さじゃないなこれは。

まって、痛い。

痛いよこれはイテェェェェ💢💢💢

心臓を中心として、下はみぞおち、上は歯茎まで、おはようからおやすみまで痛いよ!

痛いというより苦しみ?強い圧力?テレビドラマなんかで、心筋梗塞でぶっ倒れる人が胸をかきむしりながら倒れるじゃないですか。あれって、この痛みなんだろうな。確実に寿命を縮めていく痛み。

痛み止め、痛み止めを……。次は効くかもしれない、と3回我慢した。

 

無理。

 

「あ、ぉ、ぉ」

喉が枯れて声が出ない。手のひらをバタバタさせながら「あおー!」必死。

「めっちゃ痛いんですけどこんなもんすかね……」

「痛み止めが効いてくるまでだからね。眠くもなってくるから大丈夫ですよ〜」

眠さなんでぶっ飛んだよ残念ながら。痛み止め効かなかったら地獄だよ、失神するかも。

今すぐ全身麻酔に切り替えてくれ!と叫びたかったが、強がりなので言えない。

 

それから回は痛みがあったが、都度痛みは減って、ついに何も感じなくなった。眠気もやってきて、よし眠ろうと目をつむる。

が、眠りの世界に入ろうとすると必ず、鼻が「んゴッ」と音を立ててチューブが動いて目がさめる。スタッフが気付いて近寄ってきた。

「眠くない?」

「眠れません」

眠れないアル、って神楽かよ(銀魂

「先生どうします」

「んー、じゃあ◯◯に変更、~から始めちゃっていいよ」

投げやり。これだけ眠らないやつもなかなかいないのだろう。

 

 

誘発~不整脈のデパートと呼んで~

4本の肺静脈の周囲をぐるりと囲むように焼灼し、異常電流をせき止める。まずそこまでは終了。これで心房細動は出ないはず。

私の場合、心電図上でもう1つ「心房頻拍」が確認されている。心房細動と同じく肺静脈を出どころとしている場合も多いので、肺静脈隔離をしてしまえばどちらも起こらなくなる人もいる。

ただ、別の起源を持っている場合もある。心拍数を機械的に上げていき、不整脈を誘発させて確認をする。

誘発されない場合に考えられることは2つ。

・肺静脈起源の心房頻拍だった(治癒、オペ終了)

心房頻拍の気まぐれで今は不整脈が起きない(今日治せないのでオペ終了)

誘発された場合は、その起源を特定して焼灼していく。

 

心拍数を徐々に上げていく。

「出ないな」「こない」「上げて」「まだこない」

終わりかな、と思ったそのとき。

「きたっ!」

人為的に上がる心拍とは異なる、いつもの不整脈の拍動が感じられる。キタキタキタ!!

「でも心房頻拍じゃ、ないねぇ」「あげます?」「あげてみて」

軽率にあげないでくれ、しんどいよ!

「続いてるね」「あっ、ジャンプした!」「えっ、どれ」「あれー、飛ばなくなった」

心拍に抜けがあった=ジャンプした、ですね。いいから、もうやめてくれ。池で魚が跳ねるのを見ているみたいな感じ、もうやめてくれ。

不整脈脈拍が通常の2.5ぐらいに達する。1分間に70拍の心拍数が180に跳ね上がるなら、いつもの2.5倍も心臓が動いて血液たくさん循環するじゃん。

 

って、思うじゃん?

違うんだ、心房がそんだけ沢山の信号を送っても、その次にひかえている心室は全部の信号に応答しきれない。それどころかオーバーワークになって、血液を送り出すことができなくなる。

そうすると、脳に行く血液が足りなくなったり、心臓の中で血液が淀んだりする。

(血液の淀みによって血液が固まりやすくなり血栓ができ、それが脳に流れていって脳血栓が起こりやすくなる。だから不整脈を抱えていることは、心臓うんぬんよりも脳梗塞のほうが怖い)

 

日常起きていた不整脈よりもさらに強い不整脈を、機械の力で延々と起こし続けていることになる。ついに私の体が悲鳴を上げ始めた。あれだけ冷えていたカテ室の中、体が燃えているように熱くて、眠さとは違う頭のぼんやり感と目の前の狭窄感でおかしくなりそうだった。

「暑いんですけど……

「熱い」んですけど。先生は慌てて「止めて止めて!」と刺激中断。

 

【後の説明で判明したこと】

・明確な心房頻拍は出てこなかった

・ざっくりと「発作性上室性頻拍」と括るしかない

 

こんな感じ。

型にはまった不整脈の波形が出てくれば、焼灼の目処もつけやすかったのかもしれない。典型例の波形を出そうと、心拍数をどんどん上げていったのだろう。

 

 

エンドレス誘発・焼灼~モグラ叩き~

というわけで、一発目の誘発の結果と、カテーテルで捉える心臓の電流から、異常起源を焼灼していく。

もう痛み止めが効いているので焼灼は苦にならない。ただ、胸の中で何かが動いているのはよくわかる。

先生の口ぶりからするに、なにか危険性のある個所を焼く場合は線ではなく点で慎重に囲って、危険性がないとわかったら隙間を埋めて行くようだ。

 

*イメージ図 

f:id:saorockcat:20170911112658j:plain

多分、眠くもなったと思う。少し目を閉じるが、喉の違和感と鼻の「ンガッ」という音で目がさめる。

 

度目の焼灼を終えたらまた誘発。今度は無謀な心拍数の持ち上げをせず、マイルドな心拍数で様子を見ているようだった。

すぐに誘発される不整脈まだ焼きが足りない。

ヤンキー漫画かよ💢

起源を特定すると度目の焼灼。

まるでモグラ叩き。

 

私の記憶では、少なくとも度は焼灼したと思う(もしかしたらもう一巡したかも)。そして3度目の誘発で若干の不整脈が出たものの、すぐに収まった様子。

ウトウトして目がさめ、誘発で意識がハッキリし、の繰り返し。本来であれば眠っている間にオペが終わり、~3時間で病室に戻ると聞いていた。

病室に戻ったら絶対安静だけど、飯が待ってる。そんなことを思いつつ、カテ室の安堵感を肌で(青いシート越しに)感じた。

 

 

オペ終了~体内時計の杜撰さ~

「某山さん、だいじょうぶ?」

「だじょぶでぇす(疲れたけど)」

「終わりましたよ、長い時間かかってごめんなさいね。ご家族も心配してるね」

「今、何時ですか」

 

17時」

……あ?」

 

「朝9時に入ったんだもんね、疲れちゃったね。誰か、病棟に連絡してあげて!」

17:00……9:00-17:00、なんだこれは、少年野球の丸一日練習スケジュールじゃないか……

しかもまだカテーテル抜いてないし術後のアレヤコレヤが終わっていない。病室to病室で3時間というのがカテーテルアブレーションの平均らしい。

今回の場合、帰室したのが18:00だったので、病室to病室で9時間もかかった計算だ。

 

鼠径部のカテーテルを抜き取ると、間髪入れずに止血。O先生直々に圧迫止血をしてくださる。これが痛い。傷口が痛いわけじゃない。

整体に行ったことがある方なら分かるだろう。鼠径部をゴリゴリされるときの強烈な痛みを。でも、出血を素早く止めて傷口を綺麗にするためには必須の圧迫止血だから、歯を食いしばれぇ!と自らに言い聞かせて10分我慢。

そして鎖骨下も同じように圧迫止血をしてもらい、体は完全に起こさず、スタッフさんが背中を持ち上げて各部の電極を外していく。これも完全なる止血のため。足の付け根は動かさないのが鉄則。

術衣を整え、タオルかシーツかよく分からないけどそれごと数人の力でベッド移動。その際にスタッフの腹に点滴のチューブが挟まれ、点滴の針が腕の中でギュイーンとなるトラブル発生。

「だいじょうぶ?!」「痛くない?」

痛いわ、そりゃ。でもすぐに痛みは引いたし出血もなく「だいじょぶですよ」と。なんかもう、こんなに長い時間付き合ってくれた皆さんに感謝しかなくて、小さいことは気にしない菩薩になった。

 

 

絶対安静~拷問~

 

カテ室を出ると、相方が待っていた。私の第一声。

次男、ピアノ行った?」

まだピアノに通い始めたばかりだから、親の指示なしにきちんと出かけて行ったか不安だった。

 

帰室し、21:00までの時間は絶対安静。腕を動かしてもいい、首もいいが、足の付け根が動くようなことは絶対にダメ。

手術中時間も硬いベッドに仰向けで「気をつけ」の姿勢のままだったから、既に腰が激痛。しかしこれから3時間耐えねばならん。

いいか、これは拷問だ。

ただ1つよかったこと。

術中ガッツリと寝てしまう人は、呼吸管理のために酸素マスクを装着するらしい。薬のせいで喉の感覚が狂ったり違和感が残り、水を飲むのに苦労するそうだ。そういった場合は術後30分ぐらい経過してから看護師さんが見ている中で水を飲むという。

幸か不幸か手術の実況中継ができる程度に意識鮮明だった私は、ストロー付きのジャスミン茶をガブガブ飲むことができた。

ああ、麦茶にしとくんだった。喉がガリガリする……

 

術後の血圧測定。まさかの70台?!

オペ中、やたら頻繁に「気分悪くない?」「目が回ってない?」「頭痛くない?」と訊かれた。自覚症状があったのは誘発一発目のブラックアウト寸前ぐらいだったから、なにをそんなに心配しているのか正直よくわからなかった。

その理由がわかった。

実はオペの最中、血圧が70を下回ったらしい。

それでみんな声かけてくれたんだ。しっかりと受け答えができる状況だったのは、却ってよかったのかもしれない。

熱は37.6。オペ後だし、こんなもんか。

「顔色スッゲー悪いよ」

相方の言葉に看護師さんも「ほんと、顔色よくない。気持ち悪くない?」と顔を覗き込む。

顔色が悪いのはいつものことですから、とかいう軽口を叩くこともできず「腰が痛い」と訴える。

 

今更眠くなってくる。空腹はどこに行ったんだ、散歩か?院内巡視か?!

面会終了まで時間はあったが、眠いし腰痛いし喋ってるのもしんどくて「帰ってもいいよ、やることないでしょ」「子どもらごはんは?」と暗に帰宅しろと促す。

長時間オペ終了を待っていた相方には大変申し訳無いとは思ったが、全く余裕がない。お引き取り願い、目をつむる。

 

痛い。腰が痛い。眠れない。

 

血圧の降下があったので看護師さんはちょいちょい様子を見に来てくれるが、ひたすら「腰が痛い」と言い続ける。

痛み止めを点滴で入れる手も無くはないが、副作用を考えるとお勧めできないという。吐き気なんかが出るのかもしれない。この体勢で嘔吐なんかできっこないので諦める。

「どうしても我慢できなくなったら言ってください、考えます」

この状況でまだ我慢できるような口調で話してしまう自分を呪う。

泣いて訴えるべきだったか。いや、ほんと泣きたかった。

 

20:30になり、「あと20分頑張って!」と言われる。お?10分おまけしてくれるの?俄然やる気に。しかしやる気になっても痛みは消えずに増すばかり。

それと、喉のあたりに突っかかるような違和感があった。それに関しては、眠くなる薬とか痛み止めのせいかもしれんとのこと。

ベッドの柵の左右を握りしめ、足の付け根は動かさないように、でも腰だけはうまいこと浮かせるようにして耐える。脂汗がでてきて、こりゃもう限界だと悟る。20分経ったのに看護師さんが来ない。ちょっと躊躇して、でも諦めてナースコール。

 

「限界です」

 

相撲の引退のように。

「あと8分!8分だから!」

 

8分の誤差に拘るのなんて日本人しかいないってば!

もっとグローバルな視点で物事を考えようよ!

我々にもシエスタの時間を!

 

ゆるゆるのO先生なら「あーもういいんじゃない?」って言うよ!

 

分後。

「よく頑張りましたね、横向きましょうか」

ただし看護師の手を借りて。

横になったまま夕飯を食べるので右を上にして、でも足の付け根は動かせない(それは変わらない)ので横にというか斜めに?ピアノの譜面台みたいな感じ?になる。

背中側には丸めた布団と枕を置いて、斜めに寄りかかるような感じ。腰を大きく動かすことができない。

そして体勢を変えて気づいた。ものすごい吐き気がする。夕飯が運ばれて来たが、メニューを見ただけでしんどい。マヨネーズ焼きって何が焼かれてるの。味噌味……しんどい。

茹でキャベツみたいなものからキャベツを拾って食べるが、椀の中が見えないのでクレーンゲーム状態。米も少し。ギブアップ。

「食べれませんでした。あと、すごく気持ち悪いんですけど」

「吐きそう?」

「ギリ吐きそう」←日本語ログアウト

点滴から吐き気どめを入れてくれた。

上になった右足の付け根は曲げないように、左足だけを持ち上げるようにくの字に曲げて、上半身はほぼうつ伏せ。体をひねった体勢でなんとか眠ろうとする。

腰の痛みが尋常では無く、30分の間を置かずに目が覚めてしまう地獄。